企画書公開&反省記事。
本題に入る前に前置きから。
■前置き:講談社に企画書を出した
講談社の電撃的な告知を目にした私はまんまと色めき立って講談社のGCLに応募した。純粋にやましいメンタルで、個人製作の同人ボドゲを作るのに必要なコネと資金が欲しいという想いを胸に応募に手を染めたのだ。結果はめでたく一次選考通過となった。(No.160)
しかし現実は甘くはなく二次選考を通過することは叶わなかった。それ自体は残念だが、良い面もある。ぐぬぬ講談社め! という強いモチベが湧いたのだ。この気持ちをバネどころかマスドライバーにして、クリエイターズラボのどの企画よりも成功してやろうと思う。やったるぞ~!
さて、当記事では一次選考を通過したKAMITOKI企画書について、どういうことを考えて作ったかと、振り返ってみて思うところをまとめてみる。
来る第二期GCLに挑戦しようと思っている人向けに、どうしてもゲームのデモではなく企画書で勝負したいという場合の参考になればと思う。
よく言われることだが企画書に正解というものはないので、その点ご了承いただきたい。
■前置き:当記事の目的
なぜ企画書を公開するのか、DegJPの狙いがざっくり2つあるので白状しておこう。
プロジェクトの宣伝に繋げたい
提出企画でもあるKAMITOKIの認知を広げたい。アナログゲームは宣伝しづらいコンテンツだ。その上、私は一個人かつニュービーの同人クリエイターで、大した実績も無い。なので話題性を得られそうなチャンスがあるなら何でも試してみたい。
インディーゲーム業界の発展に少しでも寄与したい
かなり端折って言えば、良い企画書が書ければ良いゲームが作れるというのがかの無名なDegJPの持論である。
すなわち企画書の知見を広めることは、転じてインディー同志達のゲーム制作力にバフを掛け、世に出るゲームの面白さを底上げすることにつながるだろう。したがって私はそうしなかったときと比べ、より面白いゲームが遊べることになる。やらない手はない。詭弁だが本質的にはマジメにそんな感じだ。
■調査
講談社GCLが発表された当時、動作するモノを提出できる段階に無かったDegJPにはプレゼンにあたって企画書を書く以外の選択肢が無かった。
さて、企画書を書こう。
そう決意して初めに浮かんだ課題は「何を伝えよう?」だった。
というわけでまずは情報を集め、企画書で何を伝えるべきかを考察してみるところから始めた。
インスタ映えするおしゃれなカフェを探している人に自分の通っているおっパブのえりかちゃんをゲキ推ししたところでミスマッチ甚だしいのである。調査のステップはそんな最低限のコミュニケーションだ。
うるせぇ俺のえりかちゃんを揉め! という一方通行なやり方を否定するわけではない。そういう人はむしろとことん突き抜けたプレゼンをするべきだと思う。
ゲーム系の情報サイトに講談社GCLの中の人のインタビューがいくつか掲載されていたのでこれを参考にした。
応募は10月10日に行ったので、実際に参考にできたのはその時公開されていたアナウンスページともぐらゲームスの記事だけだった。
■構成
調査の結果、今回の企画書は割と縛りがない感じだったので、結局頭空っぽで下記構成にしようと決めた。あとはインタビュー記事から読み取れた講談社GCLの方向性みたいなものを汲んで情報提示してあげれば良いだろう。
というわけで、今回は伝えるべき内容を下記の4ページに定めた。ゲームの具体的な仕様やストーリーだとか設定だとか採算分岐の見積もりとかは不要と判断している。
1ページ目 - 表紙
印象に残るように世界観を提示。企画の顔となるように。
2ページ目 - ゲーム概要
これは応募要項で最低限求められている内容。
3ページ目 - やる気アピール
講談社GCLはクリエイターとの関係性を重要視していると受け取った。先方に継続的に付き合っていく価値あるパートナーだと感じてもらえるよう、熱いビジョンを携えた人間だとアピールできると良いと思った。
4ページ目 - 展望
講談社がゲーム市場に参入するのは、建前はどうあれ企業の生存戦略の一環であると受け取った。こちらの企画にビジネス的拡大の余地があることをアピールできると良いと思った。
■1.表紙
表紙はこのようになった。ここで達成したかったのは目を引くことだ。
イメージアートをドンと載せ、企画の概要情報をちょろりと添えた。
実際どのような形式で選考が行われたのかは分からないが、個人的になぜか企画書は印刷物であるという固定観念がある。会議室のテーブルの上に企画書のペラ束が山のようになっている様を想像した。なので、懸賞ハガキのように(?)まずは選考者に手にとってもらえるよう興味を引く「表紙」が重要だろうと思ったのだ。
しかし、どうやら講談社GCLは全ての企画に公平に目を通している気配なので、特別これが功を成したとは言えなそうだ。とはいえ、表紙が「顔」となって格好がつき、対外的に公開しやすくなったのは良かったなと感じている。
余談:
なお、この素晴らしいイメージアートは「ピッチコンセプト」と呼ばれる類いの絵素材である。本来プロジェクトの初期段階など、チーム内で世界観の意識合わせに用いられるだけのもので、つまり最終的なプロダクトに載るものではないのだが中々イケていて気に入っている。
このアートは9月頭にKAMITOKIプロジェクトが始動して間もなく、有償でノタ(@notant82)さんに描いてもらったものである。彼女の名誉のために補足するが、内々で使う資料なので雰囲気が出せていれば良く、あえて描き込み精度は求めず安く仕上げてもらうようオーダーした。彼女のツイッターを見れば高い技術を持っていることが伺えるはずだ。(そして全然雰囲気が違う!)
また、当初の想定用途ではなかった電子配信(ネットへの掲載など)について許諾をいただいている。
■2.ゲーム概要
ゲーム概要はこのようになった。ここで達成したかったのはゲームコンセプトの伝達だ。ストーリーやゲームルールの詳細説明は省き、「どんな体験が得られるゲームなのか?」について、かいつまんで説明している。
企画書にゲームルールを書いて仕様書っぽくなってしまうのを避けた。
この意図は別記事にまとめるが、簡単に言うと文章で細かくルールを説明してもゲームプレイを体験してもらうことはできないし、そこから面白さの真価を計ることなど常人にはできないと考えるからだ(そういう意味で企画書よりも映像や実際に動かせるデモの方がプレゼンは強い)。つまり要点を簡潔明瞭に伝えるため極力ノイズを取り除いたという形だ。
しかし、簡単な遊び方の説明すら省いたのは悪手だったと反省。読み手が完全にゲームを体験できなくとも、せめてどんな体験になりそうか想像を膨らませる余地を入れるなど何らかフォローすべきだった。これは具体的にどうすれば良かったかパッとは思いつかない。やはりデモなどの動くものを基に、動画やせめて画像などで(企画書とは別口にでも)プレイイメージを伝達するのがベターだったかと思う。
あと妙な余白を既存のラフ画や仮イラストで埋めた。絵素材は唯一のコアメンバーであるけいあっと(@kei_arukume_inv)によるもの。
■3.やる気アピール
やる気アピールについてはこのようになった。ここで達成したかったのはこの企画の意義が何かを示すということだ。その本質的な狙いは、平たく言えば活動に対する共感を得るというところにある。
ここは必ずしもKAMITOKIの面白さに繋がっていなくても良いというつもりで書いた。ベクトルの違う話なのだ。どちらかと言えば企画内容ではなく、クリエイター自身がどんなやつか、どんな思想を持っているのかを知ってもらうという意味合いが強い。
というのも、調査段階で講談社GCLが「漫画家と担当編集」のようなパートナーシップを望んでいることを知ったからだ。ラボメンバーとなったクリエイターと継続的な関係性を持っていきたいという意図が根底にあるのだと感じた。
なので、先方にとってそれに足る人材かが判断できる形になると良いだろうと考えた。そのためにも、ここでは自分のKAMITOKIに懸ける想いを素直な言葉で書いた。もっとパンチ強めにやりすぎても良かったかもしれない。
それと、なぜボードゲームなのかという点について突っ込まれそうだったので理由を書いている。しかし、これでは納得してもらうには足らなかったようで、面接の際に深掘りされた。その際はアワワワ……となりながら、ここに書いたことを繰り返しつつ、自身がボードゲームというフォーマットにこだわる理由を自己分析して受け答えした記憶。
あと妙な余白を本家の画像引用で埋めた。フルカラーだと豪華過ぎて雰囲気飲まれてたのでセピアにして抑えた。
■4.展望
最後の展望についてはこのようになった。ここで達成したかったのはビジネス的拡張性を提示することだ。その他にも、マイルストーンや制作体制についての言及も行っている。これらは「こいつらしっかりゲーム作り上げられるのか?」という信用面についてのささやかなアピールのつもりだ。(実績がないため)
肝はメディアミックスへの言及になる。何らかプロダクトを広範に展開してビジネスチャンスを拡大するための策は、安直だがメディアミックスしか思いつかなかった。KAMITOKIは実際の規模はどうあれ元々メディアミックスを行っていくつもりだったのだ。
調査時、講談社GCLという企画自体が企業の生存戦略の一環であるということを感じ取ったので、ビジネス的展望を提示するのはマイナスにはならないはずだと踏んで積極的に取り上げた。
また、内容的には「俺たちの力じゃ無理だぁ~。講談社さん助けてくり~」という体になっている。これは事実なのだ。シナリオライターや脚本家、漫画家やアニメーターといった知り合いがいないのにメディアミックスを企んでいる我々にとって、講談社の持つネットワークは非常に貴重だということに嘘偽りはない(講談社のサポートが得られないと決まった今、本当にどうしようか悩んでいる)。それに、どうやらGCLの趣旨(取材や技術、人材マッチングのサポート)にも合致しているらしいのだ。なのでそこは素直に、この企画がどれだけ講談社のサポートを必要としているのか、という訴えかけに変換した形だ。
それから、国外に向けてもプロダクトを売っていきたい講談社と、日本でウケそうにないジャンルだから海外(漠然)を主戦場にしたい我々とで結果的に向いている方向は同じだと感じた。そのため海外への展開についても言及しているのだが、思えばなぜ海外向けにしたいかの理由を明記していない。そうしたい前向きな理由を述べていれば、もっと企画の説得力を高められていただろうと思う。
■使用ツール
- Microsoft PowerPoint 2013
- Canva
■おわり
かくしてKAMITOKI企画書はこのような形に落ち着いた。特別な技術や極秘情報が隠されていたわけではないということがお分かりいただけたと思う。何てことはない。相手の性癖を調べて、こちらのおすすめしたいおっパブを相手の心に刺さるよう分かりやすく教えてあげれば良いのである。
有益な情報は見つかっただろうか? 何かの気付きに繋がれば幸いだ。
宣伝:
さて、KAMITOKIプロジェクトは始まったばかりである。現在プレイアブルなプロトタイプを公開している。(もしくは近日公開予定)
まだまだプロダクトとしての完成には程遠いのだが、アーリーアクセス的なノリで、プレイテストの開催とそのフィードバックの収集を目的としたDiscordコミュニティを立ち上げた。ゆるめな感じなので気軽に参加してくれると嬉しい。抜けるも入り直すも自由である。そして、KAMITOKIについて意見を聞かせてくれたらなお嬉しい。